賃貸物件を引っ越す前に
2024/03/22 お役立ち情報
新築を計画中の方で、現在の住まいが賃貸物件という方は多いのではないでしょうか。無事工事が完了し、いよいよお引越し。住み慣れた賃貸物件を退去するときに、気になるのは退去費用です。気持ちよく新しい我が家に入居するためにも、退去費用のトラブルは避けたいもの。そして、無駄な出費は抑えたいものです。
そのためには、どんなことに気を付ければよいのでしょうか。
原状回復費用はどこまで?
退去の際に請求されるのが、原状回復費用。これは、住む前の状態に戻すための費用ではないことに注意しましょう。原状回復義務とは、損傷を原状に復する義務、と民法で定義されています。借主のせいで生じた傷や汚れ(特別損耗)は、元に戻す義務があるのですが、そうでない、日常の生活を送っていて生じる傷や汚れ(通常損耗)まで元に戻す必要はないのです。
例えば、ソファーやベッドの足の跡がついた床、冷蔵庫のうらの壁紙の電気焼けは通常損耗です。反対に、モノをぶつけたことで穴が開いた壁や、飲み物をこぼして放置していたことで傷んだ床は、借主が負担するべき特別損耗となります。
長く住んだ部屋
長く住んでいると、それだけ壁紙などは傷んでいくものです。
ただし、物件に使用されている資材(壁紙、クッションフロアなど)には耐用年数があり、耐用年数を超えた資材は価値が1円となります。
例えば、壁紙の耐用年数は6年とされており、特別損耗により貼替えが必要な部分の費用が30,000円だとすると、
一年で退去した場合は、約85%の25,500円を負担しなければなりませんが、五年住んでいれば約18%の5,400円の負担でよくなる、ということです。
クロスの貼替等の請求があった場合は、居住年数に見合った請求額かどうかを確認しましょう。
ハウスクリーニング費用の考え方
国土交通省住宅局の「原状回復におけるトラブルとガイドライン」によれば、ハウスクリーニング費用、エアコンクリーニング費用などは貸主の負担との記載があります。ただ、現状として退去時に借主に請求される場合が多くみられます。これは、ガイドラインに照らし、無効と主張することができるのでしょうか。
判例によると、
ハウスクリーニング費用の具体的な金額などが契約書に記載されており
契約締結時に、貸主と借主の合意があり
その金額が妥当性のあるものであれば
有効(借主負担)であると判断されることが多いようです。
トラブル回避の具体的方法
それでは退去時にトラブルを起こさないために、入居前、入居中、退去時に注意すべき点をみていきましょう。
●契約時・入居時
契約時には退去時の請求額をしっかり確認する
契約する際には、重要事項説明などたくさんの情報が貸主側から与えられます。
借主からすると、矢継ぎ早に説明されるので、なんとなくわかったようでよくわかっていない、という状態なのではないでしょうか。
家賃がいくらか、と同じくらい、退去時にどんな費用がかかるのかをしっかり確認しておきましょう。忘れないようにメモを取ることもお勧めします。
また、引渡があり部屋に入って気づいた、最初からあった傷や汚れなどは写真を撮って保存しておきましょう。可能であれば「こんな傷がありましたよ」と貸主側に伝えておくことも有効です。
●入居中
大切に使う
借主には「善管注意義務」があります。これは、一般的、客観的に要求される程度の注意をしながら借りたものを管理しなければならないという義務です。
居住中に、うっかり物を倒して壁に穴をあけた、などといったことがあれば、加入している保険で対応できる場合があります。また汚れなどをを放置して取り返しがつかない状態にならないようこまめに清掃するなど、何かあればそのときに解決しておく、借りたものは大事にする、という考え方が大切です。
●退去時
出来る範囲で清掃をしておく
退去時、元々ついていた設備(照明器具など)で外したものがあれば、元通りに設置しましょう。そして残置物、ゴミが残っていないか確認しましょう。できる範囲でよいので、清掃をして立ち合いを迎えましょう。
貸主も人です。丁寧に使ったもらった、という印象があればその相手とのトラブルはなるべく避けたいという考えがはたらくものです。
サインを求められたら慎重に。
退去をするときに、貸主側の管理会社や業者さんと一緒に室内チェックをすることが通例として行われています。チェック後、書類にサインを求められることがあります。この書類が単に「チェックしましたよ」という意味のものならよいのですが、「この損傷は私がつけたものなので精算します」といった意味合いのものであれば、すぐにサインするのは危険です。サインしないと引渡が完了しない、ということはありません。
一度サインしてしまうと、あとで「この請求はおかしい」と思っても覆せなくなる可能性があります。内容はよく確認し、納得したうえでサインしましょう。
原状回復によるトラブルは、裁判費用を考えると訴訟を起こすには割があわず、どちらかが泣き寝入りしていることが多くあります。新居という新しいステージを前に気持ちよく引っ越しができることを願わずにはいられません。