将来のために「家族信託」

2023/09/14 お役立ち情報

将来のために「家族信託」

日本では高齢化社会が進み、それにともない認知症問題が取りざたされています。2040年には65歳以上の高齢者が人口の35%を占めることが予想されており、およそ5人に一人が認知症となることが内閣府や厚生労働省から公表されています。

認知症になってしまうと、不動産の売却などの契約が出来なくなってしまいます。その場合は家庭裁判所に申し立てを行い、法定後見人を立ててもらうことになります。

しかし、この法定後見人は、裁判所が選定するため、専門的な知識を持った専門職の方が選ばれるケースが多く、後見人への報酬も必要となります。被後見人を保護するための制度ですので、資産を積極的に活用することなどは基本的にできません。

認知症になる前に、自分の信頼する家族などに後見人を依頼しておく、任意後見制度というものがあります。あらかじめ自分が選んだ人と、公正証書により任意後見契約を締結しておくものです。そして実際に認知症などの症状が出て、家庭裁判所により後見人を監督する任意後見監督人が選出されます。そこではじめて、任意後見契約の効力が発生するのです。

自分の信頼できる人に財産の管理処分を任せるので、法定後見制度よりは自由度がたかくなりますが、任意後見監督人への報酬も発生することになります。

2006年、信託法が改正され、それまで金融機関だけに認められていた「信託」が親族間でも活用できるようになりました。これが民事信託、いわゆる「家族信託」です。

上記二つの後見制度が認知症など判断能力が無くなってからしか利用できないのに比べ、家族信託は元気なうちから利用することができます。また、自己の資産をどう活用し、どう処分し、誰に利益を分配する、など家族の先を見据えた「申し送り」が可能となります。

 

家族信託の一般的な流れ

①資産の管理・処分を託す相手(受託者)を決める。家族間で十分に話し合いを行う。

②話し合いで決めた内容を契約書に盛り込む。

③公正証書により委託者・受託者間で信託契約を締結する。

④資産に不動産がある場合は、不動産の名義を受託者に変更する。

⑤財産管理のための専用口座を設ける。

⑥受託者は契約にのっとり、資産の管理・処分を行う。

 

家族信託の特徴

自由設計ができる

家族信託では、不動産の名義を変更するため、受託者が自由に(委託者の意思に従って)管理・売却などができます。それにより生じた利益は、契約で定めた人(受益者)にもたらされます。委託者が生きている間は委託者に、亡くなったあとは特定の人に、と「遺言」のような側面があります。

例)父(所有者・委託者)息子(受託者)所有アパートについて家族信託

息子が管理、運営をするアパートの家賃について、父の生存中は父へ、父が亡くなったあとは母へ。母も亡くなったら息子が受け取る。

元気なうちから信託できる

認知症はいつ始まるか誰にもわかりません。あらかじめ資産を信託することにより老後に安心感がもたらされます。

認知症になってからでは遅い

認知症になり判断能力がなくなると、「契約」ができません。当然家族信託ができなくなります。

家族間のトラブルにつながる

例えば、父と長男との間だけで話し合って信託契約を締結してしまった場合、母やほかのこどもたちの意見や希望が取り入れられておらず、トラブルになる可能性があります。

家族信託は、後見人制度より自由度が高く、費用が比較的安い制度ですが、トラブルにつながることもあるので、契約内容や進め方についてはしっかりと話し合うことが大切になります。